経済産業省が推奨する「ファクタリング」とは~中小企業の資金調達を支える新たな選択肢
資金調達は、多くの中小企業にとって常に大きな課題です。黒字経営であっても、入金と支払いのタイミングのずれから資金繰りに窮し、事業継続が困難となるケースは後を絶ちません。このような状況を打開するための金融サービスとして、近年「ファクタリング」が注目を集めており、経済産業省もその活用を推奨しています。
ファクタリングとは何か?その仕組み
ファクタリングとは、企業が取引先に対して保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、入金期日よりも早期に現金化する金融サービスです。日本の商習慣では「信用取引」、つまり商品やサービスを先に提供し、代金は後日支払われる「掛け売り」が一般的です。この売掛金の回収には通常30日から60日程度かかり、その間に人件費や外注費などの運転資金が不足し、黒字倒産に陥るリスクがあります。
2者間ファクタリング
ファクタリングを利用する企業とファクタリング提供企業の2者間で契約を結びます。売掛先にファクタリングの利用を知られることがなく、最短即日で資金調達が可能というメリットがありますが、手数料は3者間よりも高くなる傾向があります。
3者間ファクタリング
ファクタリングを利用する企業、ファクタリング提供企業、そして売掛先の3者間で契約を行います。ファクタリング会社のリスクが低減されるため手数料が2者間よりも低い傾向にありますが、売掛先にファクタリングの利用を知られることになり、資金調達までの時間も2者間より長くかかる傾向があります。
経済産業省がファクタリングを推奨する背景と法改正
経済産業省がファクタリングを推奨する主な理由は、中小企業が抱える資金調達の問題点にあります。多くの中小企業は資金調達を銀行融資に頼りがちですが、経営状況の不安定さや担保・保証人の不足により、融資を受けられないケースが少なくありません。また、利益が出ているにもかかわらず、資金繰りの悪化により倒産する「黒字倒産」が増加していることも問題となっています。
こうした背景から、経済産業省は中小企業のスムーズな資金調達を実現するため、ファクタリングなどの売掛金活用型資金調達方法を推奨しています。2020年4月1日に施行された民法改正により、債権譲渡禁止特約が付いている売掛債権でも譲渡が可能となり、中小企業が売掛金を資金化しやすくなりました。
ファクタリングの主なメリット
ファクタリングは、従来の資金調達方法と比較して多くのメリットがあります。最短即日から数日で現金化が可能であり、急な資金需要や支払いの不足に対応できます。融資とは異なり、ファクタリングの利用は信用情報機関に登録されないため、今後の金融機関からの借入に影響しません。
審査では主に売掛先の信用力が重視されるため、自社が赤字経営や税金・社会保険を滞納している場合でも利用できる可能性があります。売掛金を売却する取引であるため、不動産などの担保や連帯保証人は不要です。
また、売掛金を売却することで負債を増やすことなく資金調達ができるため、財務状況の改善にもつながります。
ファクタリングのデメリットと利用時の注意点
ファクタリングには多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。金融機関の融資と比較して、手数料が高めに設定される傾向があります。3者間ファクタリングでは売掛先にファクタリングの利用が知られ、信用悪化を懸念される可能性があります。また、調達できる資金は現在保有している売掛債権の額面額が上限となります。
特に注意が必要なのは、ファクタリングを装った高金利の貸付けを行うヤミ金融業者の存在です。金融庁も注意喚起を行っており、高額な手数料、曖昧な報酬基準、償還請求権つきの契約、給与ファクタリングなどは悪徳業者の特徴です。ファクタリング会社を選ぶ際には、信頼性や実績を十分に確認し、契約内容を必ずチェックすることが重要です。
まとめ
経済産業省が推奨するファクタリングは、中小企業の資金繰り問題を解決し、事業継続・発展をサポートする有力な資金調達方法です。2020年の民法改正により売掛債権の譲渡が容易になったことで、その活用はますます広がると予想されます。適切な知識を持ってファクタリングを活用することで、中小企業の経営はより安定し、成長への道筋が開かれるでしょう。